とぷんっ。

ぬるい水に身体を浸して、深呼吸してはい、いち、に、さん。

向かい側では金髪くらげがおんなじように、いち、にぃ、さん。



とぷん、ぷくん。

ちょっと潜って、また浮上して。

ちょっと目を合わせたら、急に照れくさくなっちゃって
さっきよりも深く、深く潜ってみた。



湖の底近くまで潜って、仰向けに水面を眺める。

光を反射してゆらぐ水面と、ゆらゆらたゆたう長い髪。

のんびりと泳ぐガウリイは楽しそうにしていて、
長い手足が綺麗な動作で動く様子は見ているだけですっごく楽しい。

息が続かなくなってきたから、ちょっとずつ
口から空気を吐き出しながら浮上を始める。

ぽこぽこと我先にと昇って行く泡が
ガウリイの身体を掠めて、通り過ぎていく。



あ、お魚。



思わず微笑っちゃったのはしかたない。

水草のように広がる長い髪の中から出てきたんだもん。

まったく、魚にまで警戒心を抱かせないって、
どんだけあんたは天然なのよ。

ふと、泳ぐ手を止めたガウリイが、こっちを向いた。

あたしに気付いてにっこり笑うと、すうっと大きく息を吸って。

とぷんっ!

両手を揃えて、一気に潜りにかかった。

まっすぐ近づいてくると、にっと笑ってあたしの肩を抱いて。

さっ、と、あたしの唇を奪う。

反射的に目を閉じたあたしは、舌先でだろう
唇を突かれる感触にぶるっと震えた。

本格的に苦しくなった肺が縮んで空気を押し出す。

んっ・・・ぷはっ!

息を吐き出した後、侵入してくる筈の水はなく。

代わりに忍び込んできた舌が、新たな空気を連れてきた。



いち、にぃ、さん、で目をひらく。

見えたのは、優しい笑みの人魚王子。

くらげに水草、時々恋人。

変身魔法の得意な、あたしだけの頼れるつれあい。








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魔術師5題 3 いちにのさんで目をひらけ